我が国の産業競争力の維持・向上やカーボンニュートラル等の社会課題を解決するには、年々指数関数的に複雑化かつ大規模化する計算を適時処理する必要があります。これは即ち従来の古典コンピュータのみでは量的・質的に解けなかった問題を現実的な時間で解く技術の必要性を意味します。そこで、量子インスパイアド技術を含む量子コンピューティング技術と人工知能(AI)技術を組み合わせることによって、計算能力の飛躍的な向上やデータ利用の高度化を実現することが可能になると期待されています。
本事業では、量子・AIハイブリッド技術を活用したアプリケーション創出の促進を目指して、さまざまな用途に再利用可能な形でアルゴリズムを実装した共通ライブラリの開発と、継続的な管理体制の構築・整備を実施します。
共通ライブラリ基盤の整備から、最適化・機械学習アルゴリズムの開発まで、以下のテーマが並行して進んでいます。
本研究開発では、量子・AIアプリケーション、及び共通ライブラリを利用する環境の研究開発、及び共通ライブラリの普及に向けた管理体制の明確化を行う。共通ライブラリ利用環境は、古典コンピュータや様々な量子コンピュータ(量子回路シミュレーション、GPUベースイジングマシン、量子クラウドサービス等)上で、実施項目2及び3で開発される共通ライブラリを試用し、その有効性を評価できるコンピューティング環境を提供する。さらに、産総研 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル拠点において、ユースケース創出から共通ライブラリの開発・維持を持続的に実施する体制構築を目指す。
本研究開発では、量子・AI機能を提供可能な共通ライブラリの実現に向けて、その外部仕様の策定、及び関連技術の研究開発を行う。外部仕様とは量子・AIハイブリッドアルゴリズムを元に作成したプログラムの入出力のデータの形式をまとめたもの、共通ライブラリ開発の構成や必要な機能をまとめたもの、量子・AI間でのデータの受け渡し方法などをまとめたもののことを指す。集めた情報やデータについては、適時実施者内で共有し、円滑な研究開発を進める。
本研究開発では、量子アニーリングマシンをはじめとしたイジングマシンとAIとのハイブリッドアルゴリズムによってブラックボックス最適化を行う方法(FMA)において、変数が2値しか取れない場合、かつ、制約条件が無く、目的関数が単一のブラックボックス最適化問題のみとする従来FMAの機能拡張開発を行う。具体的には、3値以上の値や制約条件、多目的最適化に対応させるといったFMAの適用範囲を拡大、イジングマシンに搭載された変数の個数分のデータを取り扱うことができないという課題を克服する新たなアルゴリズム開発及びライブラリ化を行う。
本研究開発では、量子および疑似量子アニーリングマシンを用いて、厳密解を解くことができるアルゴリズムの研究開発を行う。具体的には、アプリケーション等に必要とされるクラスタリングアルゴリズムおよび解の精度等を明らかにし、イジングマシンを用いたクラスタリングアルゴリズムの開発を踏まえて、量子および疑似量子アニーリングマシンを用いたアルゴリズムの実装・評価、及びライブラリ化を行う。